1. 分類 イギリスの大学をいくつかのグループに分類する際、歴史(創立年代)、場所、そしていわゆる総合大学か特定の分野に特化した大学かに着目するのが無難でしょう。まず、オックスフォードとケンブリッジ。両者の間には相違もありますが、日本人にとって相違はあまり意味がない。まして、私が優劣を論じるのはは畏れ多い。両大学は他のイギリスの大学、いや世界のどの大学とも非常に異なるので、別の章で論じます。Imperial Collegeまず、インペリアル・コレッジ。かつては、いわゆる「ロンドン大学」(University of London)のメンバーであったが、現在は完全独立。言わずと知れた、自然科学一般と医学の分野では、オックス・ブリッジと肩を並べる。世界大学ランキングで常に10位以内。ロンドン(の)大学(University of London)UCL, KCL, LSE, SOASロンドン(の)大学を構成する多くの大学のうち、総合大学として、UCL(University College London)とKCL(King‘s College London)の二つ、経済学はじめ社会科学に特化したLSE(London School of Economics and Political Sciences)とアジア・アフリカ研究に特化したSOAS(School of Oriental and African Studies)を挙げたい。これら以外にもロンドン大学を構成する大学はありますが、日本人の留学先としてはこの4つで十分でしょう。地方の伝統的総合大学地方の伝統的総合大学としてDurhamとBristolを挙げたい。まず、Durham大学は、北イングランドのダラム大聖堂の中にある伝統と格式を誇る総合大学。オックス・ブリッジとは異なるが、この大学も学生は各コレッジに居住する。Bristol大学はロンドンから西に100マイル、南西イングランドの中心都市ブリストルにある総合大学。どちらも、イギリス人にとても人気があり、競争率は高い。このほかにも伝統校はある。例えば、Manchester, Birmingham, Leeds, Liverpoolなど。 特色ある大学ある分野に非常に評価の高いいくつかの大学を挙げておきます。数学ではBath University、農学ではReading University、体育学ではLoughborough University、また日本人に人気があるWarwick University(理由は何でしょうか?)など。1960年代以降にできた大学は新しい学問や工学系が強いですが、よくしらべると、それぞれ前身があり、特徴を備えている。いずれにせよ、1992年以前に創立された大学は総じて留学するに値する大学だと思います。スコットランド以上はイングランドの話です。スコットランドは相当異なります。スコットランドはイギリス(連合王国)の一部ですが、法制度や宗派はイングランドと非常に異なります。このことが、教育制度にも現れています。第一に、スコットランドの大学は4年制です。これは、スコットランドの大学入学資格試験はAレベル試験と異なり科目数が多い代わりに、それほど専門化していないことに関係があります。あえて言えば日本の教育に近いです。というより、戦後日本にもたらされたアメリカ型の大学教育自体が、スコットランドに由来するものかもしれません。この辺りは、私の推測に基づくだけですので、確たる証拠はありません。第二に、スコットランドにはすでに15世紀に大学が三つSt Andrews (1413年)、Glasgow (1451年)、 Aberdeen(1495年)、そして16世紀にEdinburgh(1583年)と、その人口(現在でも500万人程度)に比して大学は非常に充実しています。第三に、皆さんが世界史で習った通り、18世紀後半からの産業革命を技術的に可能にしたのはスコットランドの大学、特にグラスゴー大学(ジェームズ・ワットの蒸気機関)やエディンバラ大学です。そうそう、近代経済学の祖、アダム・スミスはグラスゴー出身、それから近代哲学の祖ヒュームはエディンバラの出身でした。実際、19世紀後半に日本からイギリスに留学した学生は、オクスブリッジではなく、ロンドンかスコットランドで学びました。このほかに、ウェールズや北アイルランドにも良い大学はありますが、ここでは省略させていただきます。2. 推し日本人はオクスブリッジ以外の大学は知らないか、知っていてもせいぜいロンドンの大学だけです。何度も言いますが、ロンドン大学という単体の大学は存在しません。オクスブリッジと東大の両方に受かったら、東大に行く人はいないでしょう。ではそれ以外のイギリスの大学の場合はどうでしょう。日本以外で高校まで教育を受けた人は上記のインペリアル、UCL、LSE、エディンバラの方が東大よりも上だと考え、そちらを選びます。それに対して、日本だけで教育を受けてきた人は、仮にそれらの大学に受かっても東大を選ぶでしょう。それは何故だと思いますか。世界大学ランキングの順位を信用しないからです。あるいはまた、日本での就職には東大の方が有利だと考えているからでしょう。またイギリスの授業料の高さも原因かもしれません。まず、就職に関して。学部三年間をイギリスで過ごしても、日本の企業への就職では有利になることはあっても、不利になることは絶対にありません。かつてのように面接の為に東京に戻る必要は、インターネットの普及により全くなくなりました。それどころか、ロンドンで日系企業の就職説明会が頻繁に行われます。しかし、折角イギリスの大学で勉強したのだから、まず日本以外の企業への就職にチャレンジしてください。なぜなら、イギリスの大学および大学院卒業生はイギリス国内での就業ビザがもらえます。もう一つ、企業だけではなく就職先としてチャリティーも考えてください。日本と違い、チャリティーは非常に就職先として魅力的です。なぜなら給与が一般企業より良い場合が珍しくないからです。授業料に関しては、最近イギリスの大学進学に対して、奨学金を与える団体が増えてきました。例えば以下のものがあります。Tazaki財団(この財団は日本の高校2年生を対象に、イギリスのパブリックスクールとそのあと大学に進学させるユニークな財団である)江副記念リクルート財団柳井正財団孫正義財団船井情報科学振興財団東進海外大学留学支援制度日本財団日本学生支援機構(JASSO)私の推定ではこれらの奨学金を獲得してイギリスの大学に進学する学生は毎年40から50名程度ではないかと思います。オクスブリッジとロンドン以外にも良い大学はイギリスにはいっぱいあります。是非チャレンジしてください。