OCTOPUSはイギリスの大学への進学あるいは留学をサポートするために設立されました。日本において通常の中学・高校で教育を受けた若者が、イギリスの大学の学士課程(undergraduate)に直接留学・進学するケースが、最近徐々に増えてまいりました。とはいえ、アメリカ合衆国の大学へ留学(進学)する人数に比べて、ほんとうに僅かです。せいぜい100人ないし200人程度だと思われます(但し、この数字は、どこまでを「大学」と見做すかによって増減します)。また、留学斡旋機関(予備校)の情報もイギリスの大学についての正確なものはほとんどありません。なぜなら、イギリスの大学で学士課程をきちんと終えた日本人がまだ極めて少ない、したがってきちんと留学指導できる人が極めて少ないからです。従来から、大学院修士課程または博士課程に留学した人あるいは交換留学で一年間留学した人は相当数います。しかし私は、折角高い授業料を払ってイギリスで学ぶのならば、大学院ではなく学士課程にすべきだと信じています。イギリスの大学の学士課程は原則3年制(スコットランドは4年制)です。但し、コースによっては4年制、あるいは修士課程込の4年制(理系分野に多い)、医学部や獣医学部は5年ないし6年制です。また、建築科(家)希望の学生も6年制と考えてください。授業料は、外国人である日本人にはべらぼうに高いです。文科系、理科系、医学系、それぞれ値段が異なりますが、一番低額の文科系でも年間2万5千ポンドは下りません(それ以外は各自お調べください)。また、毎年、値上がりします。学士課程では奨学金はまずないと考えてください。最近、日本にできたいくつかの奨学金制度については、後で説明します。このように、授業料だけをくらべると日英の大学を比較する余地はありません。いわゆる「コスパ」がイギリスの大学は悪いです。では、それにもかかわらず、なぜイギリスの大学で学ぶ外国人留学生の数は、日本より格段に多いのでしょうか?彼ら・彼女らは別に英語を勉強するために留学しているわけではありません。恐らく、日本人で留学する生徒が少ない理由は、表面的には授業料の問題ですが、本当の理由は別のところにあります。それは、わざわざ海外で学ばなくても、日本の大学の水準(ここでは、理系と医学系)は十分高いから。ノーベル賞を日本人はたくさん取っているから。これが本当の理由だと思います。私がイングランドの南西部にあるブリストル大学に留学したのは1986年でした。当時、イギリス(スコットランドを含む)には大学が全部で約40しかありませんでした。全て「国立」ないし「王立」です(いまでも私立大学はほとんどありません)。それに対して日本では、当時すでに500近くの大学があり、現在は800と言われています。また、学生の8割は私立大学に通っています。当時のイギリスの大学は非常にselectiveでした。しかし、1992年以降、イギリスも大学(と称する高等教育機関)が急増し、現在ではおそらく200以上の「大学(ないし高等教育機関)」が存在し、その規模、学問的レベル、伝統・歴史において日本と同様に極めて多様です。先ほど、イギリスの大学は原則国立ないし王立と申しましたが、日本の国立・私立という区別をイギリスにあてはめても意味がなく、かえって誤解を招きます。例えばオクスブリッジは国からの補助は大学全体予算の1割もありません。以下では、アカデミックなレベルの高い大学、つまり私が留学したころすでに大学であった機関を念頭において話をします。それ以外の新しい大学は触れませんが、それはそれらの大学には留学する価値がないからではありません。大学の設立目的が異なるのです。一例をあげましょう。現在、オックスフォードには二つの大学があります。一つは言わずと知れたイギリス最古の大学、もう一つはブルックス大学(Oxford Brookes University)。後者は以前Oxford Polytechnic と呼ばれていましたが、法律によって 1992 年にUniversityとなりました。このような旧PolytechnicからUniversityになった、いわば新制大学はイギリスにはたくさんあります。分野によっては、研究と教育において、1992年以前からUniversityであったいわば旧制大学を凌ぐところもあります。私がオックスフォード(クライスト・チャーチ)に留学をした1990年代の半ば、民営化したJRの社員の方がブルックス大学に留学し、「Tourism」を専攻していました。この例からもわかるように、新制大学は概して、実社会のニーズに直結した分野、すなわち、経済、経営、観光、会計、技術、医療関係などを教えています。日本では1945年を境に旧制大学と新制大学に分けられますが、イギリスほどはっきりと棲み分けがされていないように思います。