これまで日本でいう私立学校の話を聞いてきましたが、一般の公立学校はどのような感じですか。公立・私立という区別は紛らわしいので、国または地方公共団体の財政的援助を受けていないindependent schoolと、そうでない(援助を受けている)学校という区別をしたうえで、後者について説明します。イギリスの大学入学以前の生徒のうち、independent schoolに通うのは人数の10パーセント以下です。その理由はもっぱら授業料の高さにあります。日本の私立中学・高校の授業料は平均すると100万円程度だと思いますが、イギリスのindependent schoolの授業料は、少なくともその3倍から4倍だと思います。寄宿学校の場合は当然それ以上です。この高い授業料は学校の建物や施設、教育の質、特に生徒と先生の比率を知ると納得がいきます。10人以上のクラスは稀です。それに対して一般の学校(local schoolとかstate schoolと呼ばれます)の授業料は原則無料です。しかし、independent schoolに比べて施設は貧弱で、一クラスの人数も多いです。ただし、日本のように40人ということはありません。20-30人程度でしょうか。教員の待遇(給料)もindependent schoolに比べてはるかに低い。一概に日本とは比較できませんが、日本の中学・高校の先生の給与はそれほど悪くないと思います(拘束時間は長いですが)。それから、ある意味でもっと重要なことは、これらlocal schoolでは学べる科目の種類が限られています。言語に関して言えばせいぜい英語とフランス語、そして受講生の多い数学、物理、化学、生物そして人気の高いコンピューター・サイエンス。あとは歴史くらいではないでしょうか。このように言うと、local schoolのレベルは低いように思われがちですが、例外はあります。たとえばケンブリッジにある有名なlocal schoolからは、毎年オックスブリッジに合計100名近く合格します。理由は申しませんが想像がつくでしょう。 イギリスにも日本のように、東大合格者ランキングのようなものはあるのですか。あります。有名なindependent schoolのホームページをご覧になってください。しかし、現在オックスブリッジの各コレッジ(オックスフォード・ケンブリッジ大学では入学者は各コレッジごとに選抜します)は、independent school 出身者をだいたい50%に抑えています。男女比もだいたい50%ずつにしています。その結果、高い授業料を払って優秀な成績を残してもオックスブリッジには不合格になる生徒が続出し、その父母から不満が噴き出ています。この問題について、私はオックスブリッジの先生方と何度も議論をしましたが、彼らの主張は、全人口の1割弱のindependent school出身者が5割入学するのだから、それでも不公平である、したがって問題はない、というものでした。皆さんはどう思われますか。現状を申しますと、オックスブリッジにたくさん合格者を出す学校は、かつてのようなパブリック・スクールではなく、親元から通う有名なindependent school(例えばロンドンにあるSt. Paul’s school、同女子校、Westminster school、オックスフォードにあるMagdalen College School)や上述のケンブリッジのlocal schoolなどです。とはいえ、Eton CollegeとWinchester Collegeは依然として多くの生徒をオックスブリッジに送っています。日本も東大合格者の上位は首都圏の私立校が独占していますから、イギリスも事情は似ていますね。確かにその通りです。特に最近では日本も階層分化が進み、高学歴の親は早い時期から子弟を教育させます。ただやはり相違点もあります。第一は、塾の存在です。イギリスにも塾に相当するものはあります(crammer school)。しかし日本ほど発達はしていません。その理由は、independent school自体が一種の塾だからです。素晴らしい施設で良質な教員が少人数の生徒を徹底的に指導します。また、音楽、絵画、演劇、スポーツ、ボランティアなどのさまざまな課外活動を提供しています。第二は、教育の内容です。次の記事で6th formについて説明します。